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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 純文学なのに、どんどんページをめくれる。そんな小説『掏摸(スリ)』(河出書房新社)を、芥川賞作家の中村文則さん(32)が刊行した。スリの主人公が物を盗む描写や、ある犯罪組織の「ミッション」に挑む展開はサスペンス小説のようだ。他方で、「善と悪」「運命」という主題も織り込まれる。これまでもサスペンス的要素を盛り込んだ小説を刊行してきたが、中村さんは「一つの到達点に来られた」と話す。 主人公の「僕」は、幼い頃からスリをなりわいにしてきた。その技術は天才的で、犯罪組織に目をつけられる。ある物を盗め、さもないと命を奪う。緊迫感のあるストーリーが全編を覆っている。 筋らしい筋のない文学もある中で、中村さんは「物語性の否定は、これまでの文学の否定でしかない」とストーリー性にこだわる。念頭にあったのは、ドストエフスキーの『罪と罰』。「考えていても読んでいても楽しい小説を書きたかった」という。 犯罪組織を率いるのは木崎という男だ。主人公の「僕」に、こんな物語を教える。 ある貴族が、一人の少年を使用人にした。貴族は少年の人生を自ら決めようと、「運命のノート」を書く。少年は偶然のように恋し、愛人を作るが、自身の死に方までがノートにあるままだった――。 木崎は、「僕」の人生の選択肢を決めるかのように、「僕」に揺さぶりをかける。 「一番悪い人物を書こうと考えていたら、悪を超えてしまった。どんどん巨大化して、神や運命に似てきた」と中村さんは木崎を語る。 01年の同時多発テロ事件を契機に、アフガニスタンからイラクへ戦争が拡大していった。「いつの間にか戦争に向かった流れ」を中村さんは「恐ろしい」と思い、同時に、見えないところで人間や世界をコントロールする存在を感じたという。その具象化を試みたのが木崎だった。 「僕」の運命は、木崎の手のひらの上で踊っているようにも見える。「スリが出来るという業(ごう)を持ってしまったからこそ、巻き込まれている」と中村さんはいう。運命はカルマ(業)によって決まるという考え方は「ギリシャ神話の運命論に近い」とも。 作中では主人公が岐路に立つたびに「塔」が現れる。ラストで「僕」は、運命に抗するかのように塔と向き合う。 塔を通じて「木崎のもう少し上にある、人間が理解しがたいもの、この世の摂理を表現したかった」という。主人公の抵抗が実を結んだかどうか、作品の結末は多様な解釈に開かれている。そこには「言葉に敏感になることが大切だ」という中村さんの思いが反映されているようだ。 「たとえば戦争を防ぐためにも、人間は簡単な言葉で動かされてはいけない。目前の現象について一度立ち止まって考えること。読書はそうした姿勢を育てるための助けになると思う」(高津祐典) PR
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